不動産を購入する時には、不動産会社から重要事項説明というものを受けます。この重要事項説明とは何なのでしょうか?
重要事項説明とは?
重要事項説明とは、不動産の売買契約にあたり、買主が、購入する物件の概要や取引条件について、宅地建物取引士から事前に受ける説明のことです。
「それを知っていたら買わなかったのに~。」ということができるだけ起こらないよう、買主が予め知っておくべき重要な内容が説明されます。
不動産会社は、売買契約締結前に買主に重要事項説明を行わなければならないと宅地建物取引業法で決められています。
賃貸契約では、重要事項説明をインターネットを通じて行うことが認められましたが、売買契約では、宅地建物取引士が買主に対面で説明をすることになっています。
なお、説明を行う宅地建物取引士は、取引士証を提示することが義務づけられています。また、説明内容は書面(重要事項説明書)で交付されます。
一般的には、不動産会社の事務所で行うことが多いですが、買主の自宅等、別の場所で行うこともあります。所要時間は、物件の内容や質疑の量などによって異なりますが、1時間~2時間くらいが一般的です。
具体的な説明項目
重要事項説明書は、15~20ページになることが多く、非常に多くの項目が含まれています。
説明内容は、大きく3つに分けられます
- 物件の表示
- 物件に直接関係する事項
- 取引条件に関する事項
重要事項説明書と売買契約書で内容が重複している部分もありますが、それらは契約の前に確認をしておくべき重要な内容であるため、重要事項説明書にも記載して説明する項目となっています。
1.物件の表示
売買対象となる物件を明確にするために記載されます。物件を特定しておく必要があるため、どこにある(所在)、どのくらいの広さの(面積)、いつ建てられた(建築時期)物件なのか、といった情報が記載されています。
- 名称(マンションの場合)
- 所在
- 構造
- 面積
- 家屋番号
- 建築時期
2.物件に直接関係する事項
その物件を利用する際にはどんな制限や決まりがあるのか、インフラ、周辺環境やハザード情報(過去の浸水履歴、災害予測)などについての説明が記載されています。
- 売主、占有者
- 登記記録の内容
- 建築制限(都市計画法、建築基準法、その他の法令)
- 敷地と道路の関係
- ガス、電気、水道、排水などインフラの整備状況
- 周辺環境について
- ハザード情報(過去の浸水履歴、災害予測)
また、マンションの場合には、以下の項目が追加されます。
- 管理規約の内容等、定められているルールや使用方法について
- 専用使用権やその他の設備について
- 管理費、修繕積立金、その他の負担額、一時負担金について
- マンション全体の修繕積立金の額、滞納額について
- 大規模修繕工事の実施予定や各負担金の値上げ予定について
- 管理会社の情報
3.取引条件に関する事項
いくらで売買するのか、もし契約を解除する場合はどのようになるのか、などについて説明されます。
- 売買金額や手付金の額、それ以外に授受される金銭について
- 契約を解除する場合の取り決め(ローン解約、手付解約等)
- 違約金の定めなどについて
重要事項説明を受けるときのポイント
重要事項説明書には、不動産のプロではない一般の方にとっては初めて聞く用語や聞きなれない内容が多く出てきます。買主にとっては初めての不動産取引であるケースも少なくはないはずです。
説明が上手い取引士は、用語の意味やその項目を説明する意味についてなども、分かりやすく解説しながら説明をします。ところが時々、詳細な説明をほとんどせずにただ音読していくだけになっているケースもあります。
不明な点があったら遠慮せずに質問をし、納得して進めることが望ましいでしょう。事前に重要事項説明書を入手し、一度自分で目を通してみて、質問事項があればあらかじめ伝えておくのでも良いでしょう。
重要事項説明に関係するトラブル例
不動産会社が十分な説明を行わなかったことでトラブルになってしまうケースもあります。以下、実際のトラブル例をご紹介します。
事例1 土地を購入したが計画していた建物が建てられなかった事例
延面積30坪程の建物を新築したいと考えて土地を購入したところ、規制がありその大きさの建物は建てることができなかった。そのため、買主は建物の建築をあきらめて土地を転売した。買主は不動産会社を訴えたところ、どのような制限を受けるのか具体的に説明をしていなかったとして、買主の訴えは認められた。
事例2 中古マンションを購入後すぐに、事前説明がなかった一時金の徴収があった事例
中古マンションを購入し、入居して2ヶ月後に、管理組合から外壁と給排水管の大規模修繕工事のためとして特別徴収金(130万円)を求められた。買主は、管理組合による大規模修繕と特別徴収の総会決議について何ら聞いていないとして、特別徴収金を代わりに払うよう不動産会社を訴えた。 不動産会社が重要事項説明をした後に特別徴収を決めた総会決議があり、不動産会社は説明することはできなかったと反論したものの、総会決議は売買契約前になされており、築13年経過したマンションであるので、大規模修繕の実施予定について買主に伝えるべきだったとして、買主の訴えは認められた。
これらの事例を含め、実際には、一般の方が調査不足や説明不足があることに気づくことはなかなか難しい事が多いと思います。ですが、重要事項説明を受ける際には、単に説明を聞くだけにとどまらず、自らも重要な点を確認しながら聞くとよいでしょう。その物件を購入したら自分の希望通りに利用することができるのかどうか、理想を実現することができるのか、他にリスクや障害はないか、といった視点で説明を聞くと、後々「聞いてなかった。」と言う事態にならず、より納得、安心した取引につながるでしょう。