土地の登記情報を確認すると、権利部の乙区(所有権以外の権利に関する事項)に地役権が登記されていることがあります。
ここでは、地役権と要役地・承役地について分かりやすくご説明します。
地役権とは?
地役権とは、「自分の土地の利便性を向上させるために、他の人の土地を利用できる権利」のことです。
例えば、自分の土地が道路に面していない場合、道路に面している他の人の土地を通らないと自分の土地に出入りができません。
通る土地の所有者に「通っていいですか?」と聞いて通っているのでは、いつか、何かの事情や所有者が変わって「通らないで下さい!」と通行を禁止されてしまうかもしれません。
そのような可能性があると、土地を十分に利用することができなくなり、資産価値も下がってしまいます。
そこで、権利として明確に設定したものが登記されている地役権です。
要役地と承役地
このように、地役権には役に立たせる側と役に立つ側があり、それぞれを要役地(ようえきち)・承役地(しょうえきち)と呼びます。
先ほどの例で説明しましょう。
【図1】Aさんが道路に面していない土地を持っています。そのままでは自分の土地に出入りができません。
建物を建てるのはもちろん、駐車場でも畑でも、何か利用するためには、Bさんの土地を通る必要があります。
今は、たまに通るだけなので、Bさんも許可してくれていますが、何か利用を始めたら後でBさんから通行を止められたら困ります。
Bさんの土地の一部を買っても良いですが、Bさんは売りたくないし、Aさんもそんなに資金を使えません。
そこで、Bさんの土地の一部に通行するための地役権設定をお願いしたところ、承諾してもらえました。
【図2】Aさんの土地を要役地、Bさんの土地を承役地とする地役権を設定しました。
これで、Aさんは自分の土地を有効に利用することができるようになりました。
要役地と承役地の区別の仕方
要役地と承役地は、どちらが利用できる方で、どちらが利用される方か、分からなくなってしまいがちです。
しかし、漢字の意味で理解してしまえば、覚えなくて済むので、忘れることもありません。
- 役(えき)つまり役に立つことを必要としているのが要役地です。
- 人の土地の役に立たせるのを承諾しているのが承役地です。
地役権の設定の方法
地役権を設定するには、それぞれの土地の所有者で地役権設定契約を締結します。
一時金や年額・月額などの支払いが必要かどうかは、当事者間の取り決めによります。
また、Aさん、Bさんが土地を売却した時に、新所有者がそれぞれの権利・義務を引き継げるようにする場合は、地役権設定の登記を行います。
専門的に説明すると、地役権は不動産に関する物権のひとつで、不動産に関する物権変動は、登記をしなければ第三者に対抗することはできない、とされているためです。
地役権設定の登記は、要役地と承役地の両方に行います。なお、地役権は土地と切り離して売買・譲渡することはできません。
地役権の種類
地役権は目的ごとに種類が分けられます。代表的な地役権は以下のようなものです。
- 通行地役権
- 用水地役権
- 送電線地役権
- 眺望地役権
送電線地役権や眺望地役権のように、地役権は土地表面に対して設定されるものだけではありません。
現在では、土地の上空の利用や地下の利用を目的とする地役権が設定されることが増えています。
通行地役権
自分の土地にいくために他人の土地を通行する権利です。似たものに囲繞地通行権があります。地役権とは権利の性質に違いがあり、一般に囲繞地通行権は最低限の権利で、土地に登記がなくても認められます。
用水地役権
用水路から自分の土地まで水を引くために、他人の土地を利用する権利です。
送電線地役権
電力会社が、高圧線を通すために、他人の土地の上空を利用する権利です。承役地では、一定以上の高さの建物の建築が制限されます。
眺望地役権
高層マンションなどの眺望を確保するために、他人の土地に一定以上の高さの建物の建築を制限する権利です。