不動産の調査をしていると、地域冷暖房施設というものが出てくることがあります。
地域冷暖房施設は都市施設に該当するため、調査物件が計画地区内にある場合には、都市計画の制限等を受けるのか等が気になりますが、なかなか知りたいことが分からないことも多いと思います。
ここでは、地域冷暖房施設について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。
地域冷暖房とは何か?
地域冷暖房とは、「エネルギープラント(熱発生所施設)で冷水・温水・蒸気などを集中的に作り、配管で地域内の複数の建物に供給して冷暖房や給湯に利用する」というものです。
具体的には、大規模建物の地下等に大きなボイラーや発電設備を設置し、そこで発生する熱を温水・冷水等にして、複数の建物に配管を通じて循環させる仕組みです。
(名古屋市住宅都市局「地域冷暖房に関する指導要綱のあらまし」より引用)
建物ごとに個別にボイラーなどの設備を設ける方式よりもエネルギー効率が良く、環境負荷が低い、という利点があり、個別熱源方式よりもエネルギーの消費を14.2%減らせる、というデータもあります。(H20.3 経済産業省 資源エネルギー庁)
都市計画法の制限
地域冷暖房施設は、都市計画法第11条の供給処理に位置付けられており、都市施設に該当します。
都市計画法の第53条では、「都市計画施設の区域(中略)内において建築物の建築をしようとする者は、(中略)都道府県知事等の許可を受けなければならない。」とあります。
したがって、地域冷暖房施設が未完成の場合には、都市計画地区内では、この届出は必要と考えられます。
その他の制限
都市計画法53条の制限の他には、地域冷暖房施設の地区内で一定規模以上の建物の新築等を行う場合に、地域冷暖房の利用検討が義務付けられる、というものがあります。
東京都では、住宅は延べ面積が20,000㎡以上、住宅以外では延べ面積が10,000㎡以上の場合、地域冷暖房の利用を検討しなければなりません。
整備までの流れ
地域冷暖房に関する手続きについて、名古屋市の「地域冷暖房に関する指導要綱」を例に確認しましょう。
名古屋市では、市街化区域のうち第1種及び第2種低層住居専用地域を除く地域が地域冷暖房促進地区となっています。
- 地域冷暖房促進地区で、延床面積30,000㎡以上の建物を建築する場合、建築確認申請の前に市長に届出が必要
- 届出に対して市長が地域冷暖房の整備を検討する必要があると認めた場合、開発事業者は市長と協議を行う
- 協議の結果、地域冷暖房の整備を行う場合には、市長は必要に応じて地域冷暖房施設の都市計画決定を行う
なお、予定される熱供給区域内では、延床面積が3,000㎡以上の建築物は、地域冷暖房に加入するよう努める義務があります。
横浜市の場合
横浜市では、「横浜市地域冷暖房推進指針」によって、以下のように地域冷暖房整備の手続き等が定められています。
地域冷暖房推進地域で延床面積 20,000 ㎡以上の建物を建築(改築を含む)する場合、及び地域冷暖房推進地域を 1ha 以上含む区域の開発を行う場合、計画の概要を横浜市に届け出て、必要に応じて地域冷暖房の導入検討を行うこと。
なお、地域冷暖房推進地域は、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、再開発促進地区です。
東京都の場合
東京都では地域冷暖房の整備について「環境確保条例(正式名「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」)」で定めています。
- 一つの区域で、延床面積50,000㎡以上となる建物の建築等を行おうとする時は、建物への熱の供給方法として地域冷暖房の導入を検討しなければならない
- 区域に供給するエネルギーの効率等が基準を満たす場合、知事は地域冷暖房区域として指定できる
- 地域冷暖房区域内で、延床面積10,000㎡以上(住宅のみ20,000㎡以上)の建物を新築等をする場合、および該当規模の建物で熱源機器の更新をする場合には、地域冷暖房の利用を検討しなければならない
なお、地域冷暖房区域については、東京都地域冷暖房区域指定委員会により決定されます。
詳細は、東京都環境局のページ(地域におけるエネルギーの有効利用に関する制度)が分かりやすいです。