道路と敷地に高低差がある場合の接道とセットバック

道路と敷地に高低差がある場合の接道とセットバック

敷地と道路との間に高低差がある場合の接道とセットバックについてご説明します。

  • 接道していると見なされるのか?
  • セットバックはどうなるのか?

敷地が「接道している」とは、どんな状態?

敷地に建物を建築するには、道路に2m以上接している必要がありますが、接しているというのは、どのような状態を指しているのでしょう。

接道の定義

敷地における接道義務は、災害時の避難などを主な目的としています。実際に建築基準法施行条例の中には、「避難上有効に接していなければならない」という表現も出てきます。

つまり「接道している」と言うためには、「敷地から道路へと歩いて容易に行き来できる」ことが必要です。

敷地と道路に高低差がある場合には、その高低差が行き来に支障がないくらい小さいか、あるいは容易に行き来できるような階段や傾斜路がなければ、接道していると見なされません。

具体的な基準は、建築確認を統括する特定行政庁(建築確認を管理する市・区および都道府県など)ごとに定めており、自治体によって異なります。

愛知県の場合

例えば、愛知県では、道路と敷地の間に勾配が30度を超える65cm以上の高低差がある場合には、階段や傾斜状の通路が設置されていなければ、接道と見なしません。

なお、通路の基準は下記の通りです。

  • 通路幅:40cm以上
  • 階段の場合の形状:1段の蹴上げが65cm未満かつ段の踏面が15cm以上
  • 傾斜路の場合の形状:勾配が30度以下

長崎県の場合

長崎県では、通路の幅は以下のように決まっています。

  • 高低差が5m以下なら幅1.2m以上、高低差が5m超なら幅1.5m以上

なお、実際には、通路の設置位置や形状、建築物の規模によって細かく規定されています。

その他の自治体

戸建て住宅等の建築においては、60cm~75cmの通路幅が要求されることが多いようです。

  • 四日市市:60cm(2階建て専用住宅の場合)
  • 千葉県:60cm

高低差がある場合のセットバック

では、前面道路が2項道路で高低差がある場合、セットバックはどのように考えれば良いでしょうか?

建築基準法第42条第2項

2項道路について定めている建築基準法第42条第2項には、2文目に、以下の文章があります。

「ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。」

つまり高低差がある場合、それが「がけ地」であれば、向かい側の一方後退にする、ということです。

がけ地の定義

「久留米市 建築確認申請の手引き(2018年版)」によると、久留米市では、2m以上の高低差をがけと見なし、2m以上の高低差があれば向かい側の一方後退とし、2m未満の場合には、道路中心線から敷地側に2mの範囲の高低差を解消し、交通上支障がない状態にするように定められています。

がけの定義は、各自治体によって異なりますが、2mまたは3mの高低差を指していることが多いようです。

東京都の場合には、東京都建築安全条例において、勾配が30度超で2m超の高低差をがけとしています。また、横浜市の場合には、横浜市建築基準条例で、勾配が30度超で3m超の高低差をがけとしています

がけ地による一方後退

このように、がけ地で2項道路に接道している場合、向かい側への一方後退になるものと思われます。

ですが、横浜市のホームページ(道路Q&A)には、「道に沿って崖がある場合は、一般的には現況道路の中心が2項道路の中心となります。」と、がけ側でもセットバックが必要な旨が記載されています。

がけが有る場合も、実際のセットバックが、一方後退になるのか、両側での後退になるのかについては、統括する自治体に確認を行う方が良さそうです。

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