重要事項説明書は、どのように作成すればよいでしょうか?
調査のやり方や記載する定型文言を理解していても、何をどこまで書くのか、書かなくて良いものは何か?という判断に悩むこともあると思います。
重説に記載する内容について公式に定めているルールとしては、国土交通省より出されている「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」がありますが、こちらでは最低限記載するべきことが決められていて、それ以外の項目について、書く・書かないの判断の方法や基準は定められていません。
個人的な意見ですが、この判断方法については、企業会計原則が参考になります。
企業会計原則は、決算書などを作成するためのルールで、株主をはじめとする利害関係者に対して、正確な企業の財務情報を提供することを目的としています。
これは、買主に対して正確な物件・取引の情報を提供することを目的とする重要事項説明書と近いですよね。
企業会計原則には、企業会計全般に対して適用する一般原則という大原則があります。会計独自の内容など、重説作成には適用できないものを除いた5つの項目について、以下に記載します。なお、文章は、重説作成用に修正したものです。
➀ 真実性の原則
重要事項説明書は、物件および取引に関して、真実な情報を提供するものでなければならない。
ここでの「真実な情報」は、相対的真実を指し、「真実の情報は、時代や買主、物件・売主等の状況によって異なることがある」という立場に立ったものです。
② 正規の作成手続きの原則
重要事項説明書は、すべての項目につき、正規の作成手続きに基づいて、正確な情報で作成しなければならない。
重説作成の手続きとは、調査と記載ですので、重要事項説明書は正しい基準に基づいた調査・記載で作成しなければならない、という意味です。
③ 明瞭性の原則
重要事項説明書は、買主に対し必要な事実を明瞭に表示し、物件および取引に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
細かく表示しすぎると、重要事項説明書が逆に分かりにくくなってしまうこともあります。
そのため、重要性の乏しいものについては、最後に出てくる重要性の原則により、簡略表示にしたり、省略したりすることができます。
④ 保守主義の原則
買主に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これを適切に表示しなければならない。
未定のことや幅のある内容などの場合には、買主が悪いケースのリスクを想定できるように記載する必要があります。
⑤ 重要性の原則
重要事項説明書は、定められた方法に従って正確に作成されるべきものであるが、その目的は、物件および取引の内容を明らかにし、購入に関する買主の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、簡便な方法によることも正規の作成手続きの原則に従った処理として認められる。
つまり、大事なものは細かく正確に記載する必要があるし、あまり大事でなければ大雑把に記載したり省略しても良い、ということです。
以上、いずれも当たり前のことだとは思いますが、整理することで明確に意識できるのではないでしょうか。