急傾斜地崩壊危険区域と急傾斜地崩壊危険箇所の違い

急傾斜地崩壊危険区域と急傾斜地崩壊危険箇所の違い

不動産取引に伴う調査で「急傾斜地崩壊危険区域」を調べていると、「急傾斜地崩壊危険箇所」に出会って、混乱してしまうことがあります。この2つは、言葉が大変似ていますが、主旨や法律上の位置付けが異なりますので、混同しないよう注意が必要です。

急傾斜地崩壊危険区域

指定の根拠

「急傾斜地崩壊危険区域」とは、がけ崩れ(急傾斜地の崩壊:急な斜面が突然崩れ落ちる現象)の被害から住民の命を守ることを目的に、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」(昭和44年施行)に基づいて都道府県知事が指定する区域のことです。

なお、土砂災害には、土石流、地すべり、がけ崩れの3つが有ります。急傾斜地崩壊危険区域の他に「砂防指定地」(土石流の発生が予想される地域:砂防法に基づく)、「地すべり等防止区域」(地すべりによる被害を除去または軽減するため:地すべり等防止法に基づく)があり、これら三つを砂防三法指定区域と呼びます。これらの区域に指定されると、区域内ではそれぞれの被害を防止するための工事を実施するとともに、一定の行為が制限されます。

指定の基準

  • 傾斜度が30度以上、高さが5メートル以上の急斜面で、崩壊した場合に人家、官公署、学校、病院、旅館等に被害を生ずるおそれがある土地。
  • その区域内に、被害が生ずるおそれのある人家が5戸以上ある、または5戸未満であっても官公署、学校、病院、旅館等に被害が生ずるおそれがある区域。

区域内の義務、制限

急傾斜地法に基づき、以下の義務・制限が課されています。

  • 区域内の土地の所有者は、がけ崩れを発生させないようにしなければなりません。
  • 区域内で行う、切土、盛土、立竹木の伐採、工作物の設置等の制限行為を行う場合は、都道府県知事の許可が必要になります。
  • 区域内の土地の所有者等が急傾斜地崩壊防止施設を整備することが困難な場合で、一定の基準に該当する場合には、都道府県が土地所有者等に代わって防止施設を整備することができます。

なお、急傾斜地崩壊危険区域内の土地・建物等を売買する際には、重要事項説明において、当該区域に指定されていること、および急傾斜地法に基づき上記の制限があることを説明することが義務付けられています。

急傾斜地崩壊危険箇所

指定の根拠

「急傾斜地崩壊危険箇所」は、土砂災害による被害のおそれのある箇所を把握し、住民へ周知することを主な目的として、平成15年に建設省(当時)の通達により調査結果が公表された箇所です。この指定の根拠となる法律はありません。

この調査によって、他に「土石流危険渓流」、「地すべり危険箇所」も公表されており、この3つの箇所を総称して「土砂災害危険箇所」と呼びます。現在は、「土砂災害危険箇所」の再点検はされておらず、代わりに「土砂災害防止法」に基づく「土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域」の指定が進められています。

指定の基準

  • 傾斜度が30度以上、高さが5メートル以上の急斜面で、崩壊した場合に人家、官公署、学校、病院、旅館等に被害を生ずるおそれがある土地。

この基準は、急傾斜地崩壊危険区域と同じです。

区域内の義務、制限

急傾斜地崩壊危険箇所には、義務や制限は特にありません。

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