(敷地等と道路との関係)条例による制限とは?

(敷地等と道路との関係)条例による制限とは?

重要事項説明書の「敷地等と道路との関係」の項目に、「条例による制限」という欄があります。(全国宅地建物取引業協会連合会の書式では、「敷地の接道義務」の「条例により接道の要件が付加されます。」の欄です。)

建築基準法では、幅員4m以上の道路に2m以上接道していれば、敷地に建物を建築できることになっていますが、通常、各自治体の条例でさらに制限が加えられています。

ここでは、条例による制限とは何なのか?、重要事項説明書では、どういう場合に「有」に該当し、どのように記載するのか?をご説明します。

条例の名称等

該当の条例は、「○○県(市)建築基準条例」または「○○県(市)建築基準法施行条例」という名称のことが多いようです。首都圏では、神奈川県が建築基準条例、埼玉県と千葉県が建築基準法施行条例としています。なお、東京都は「東京都建築安全条例」という名称です。

基本的に、都道府県で定めていますが、政令指定都市等の場合には、市で条例を定めています。

例えば、神奈川県建築基準条例は、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市・鎌倉市・藤沢市・厚木市・平塚市・小田原市・秦野市・茅ヶ崎市・大和市では適用除外です。

神奈川県建築基準条例の適用市町村

(「神奈川県建築基準条例等の解説」より抜粋)

調べている物件の地域では、県・市のどの条例が適用となるのかを意識しておくと良いでしょう。

制限の内容

条例によって制限される条件や内容は異なりますが、重説の記載においては、以下の項目が重要です。

  1. 大規模建築物の接道条件
  2. 特殊建築物の接道条件
  3. 路地状敷地の建築制限
  4. 隅切り
  5. がけの規制

がけの規制は、敷地と道路との関係ではありませんが、重要な項目なので、同じ条例で制限されていることを知っておいてください。

なお、建築の制限は非常に細かい規定で、不動産業者が対応すべき範囲を超える部分も多いので、顧客が建物の建築を考えている等の場合には、断定を避けて、詳細は建築士に確認するように案内する方が良いでしょう。

1. 大規模建築物の接道条件

一定規模以上の建築物を建築する際に、4m超の幅員または2m超の接道の長さを要求する制限です。

例えば、東京都建築安全条例では、以下のように制限が定められています。

延べ面積 接道の長さ 幅員
1,000㎡超~2,000㎡以下 6m
2,000㎡超~3,000㎡以下 8m
3,000㎡超 10m
3,000㎡超かつ高さ15m超 10m 6m

2. 特殊建築物の接道条件

特殊建築物を建築する際に、4m超の幅員または2m超の接道の長さを要求する制限です。

特殊建築物とは、条例上で指定された特定用途の建築物のことです。病院や学校等が代表的ですが、共同住宅および長屋も特殊建築物に該当しているので注意しましょう。

東京都建築安全条例では、以下のように制限が定められています。

延べ面積 接道の長さ
500㎡以下 4m
500㎡超~1,000㎡以下 6m
1,000㎡超~2,000㎡以下 8m
2,000㎡超 10m

3. 路地状敷地の建築制限

路地状敷地(敷延・敷地延長、いわゆる旗竿地)に建物を建築する際に、2m超の間口および路地状部分の幅員等を要求する制限です。

東京都建築安全条例では、以下のように制限が定められています。

路地状部分の長さ 200㎡超の非耐火・準耐火建築物 その他の建築物
20m以下 幅員3m以上 幅員2m以上
20m超 幅員4m以上 幅員3m以上

なお、幅員4m未満の旗竿地には、3階建て以上の建物は建築できません(防火の基準を満たしている場合は4階建て以上の建物)。

また、路地状部分の長さが20m以下で、3階建て・延べ面積200㎡・12戸までの共同住宅の建築が認められる等の例外を除くと、特殊建築物は、原則として路地状敷地には建築できません。

4. 隅切り

一定の条件に該当する角地に建物を建築する際に、隅切りを要求する制限です。

東京都建築安全条例では、幅員がそれぞれ6m未満の道路が交わる角敷地の場合に、その角部分を頂点として、底辺の長さが2mとなる二等辺三角形の部分を道路状に整備するように定められています。(角部分の角度が120度以上の場合は除く)

この隅切り部分には建物や構造物を設置することはできませんが、建築確認の敷地には含めることができます。この点は、2項道路や位置指定道路の部分と大きく異なりますので、注意しましょう。

5. がけの規制

がけの近くに建築物を建築する場合に、擁壁の設置を要求する制限です。

東京都建築安全条例では、高さ2m超のがけの下端から、水平距離でがけの高さの2倍以内の範囲に建築物を建築する等の場合に、擁壁の設置が義務付けられています。

ここで言う「がけ」は、一定の角度と高さを満たす高低差のことを指していて、見た目の様子や形状が「がけ」らしいかどうか、ということではありません。

条例ごとの違い

ここまでは、東京都建築安全条例を例として制限の内容を見てきましたが、制限の内容は条例によって大きく異なります。

例えば、川崎市では、以下のような制限になっています。(「川崎市建築基準条例」参照)

  • 大規模建築物 延べ面積が1,000㎡超の建築物:道路幅員6m以上かつ接道の長さ6m以上
  • 路地状敷地 地上3階建て以上の建築物:接道の長さ4m以上
  • 特殊建築物 延べ面積200㎡超~300㎡以内は接道の長さ3m以上、300㎡超~600㎡以内は接道の長さ4m以上、600㎡超~1,000㎡以内は接道の長さ5m以上。
  • がけの制限 高さ3m超のがけから、がけの高さの2倍以内の範囲に建築物を建築する場合、擁壁の設置が必要。

なお、隅切りについては、位置指定道路についてのみ定められています。

東京都と川崎市でも制限に大きな違いがあることが分かります。

重要事項説明書での記載方法

建ぺい率・容積率や高さの制限など、建築基準法の制限では建てられる建物が、条例の制限によって建てられなくなるなど、実際に条例の制限が有効になる可能性が高い場合に、「条例による制限」欄を【有】にします。

【有】とした時、その制限について、具体的な内容を記載します。

例えば、「対象不動産は、接道の長さが4m未満のため3階建て以上の建物を建築することはできません」というように記載します。

逆に、敷地の大きさや条例以外の制限でもともと建てられない建物については、条例による制限がかかっても、制限は【無】として、説明を記載する必要もありません。

例えば、土地の面積が小さい場合、大規模建築物の制限について記載する必要はありません。

このように、条例の制限については、どこまで記載するかがケースバイケースの判断となるため、条例の内容を理解するとともに、買主の購入目的、背景を十分に理解しておく必要があります。

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