通常の道路は、国や都道府県、市区町村が所有・管理する道路で、公道と呼ばれます。
道路には、このほかに、私道と呼ばれるものがあります。ここでは、この私道について説明します。
私道の定義
私道とは、国や地方自治体、公益法人(以下「公(おおやけ)」と呼びます。)以外の、個人あるいは法人(以下「私(わたくし)」と呼びます。)が所有・管理する道路のことを指します。
私道は、一般的には「しどう」と呼びますが、市道と区別するために「わたくしどう」と呼ぶ場合もあります。同様に、市道は「いちどう」とも呼ばれます。
私が所有して公が管理する敷地民有地という形式の道路もあり、厳密には、道路の所有と管理は、主体が常に同じとは言えませんが、ほとんどの場合一致するため、不動産業界では、所有と管理のどちらをもって公道・私道を区別するのかは、明確には決まっていません。
なお、大手不動産会社の加盟する不動産流通経営協会では、所有の主体が公か私で、公道私道の区別をしています。ここでは同様に、所有者が公か私で公道・私道の区別をして解説したいと思います。
私道の特徴
私道は、公道とどのような違いがあるのでしょう?以下の3つの点から、私道の特徴を説明します。
- 所有者の利用制限
- 所有者以外の人の利用の制限
- 金銭面
所有者の利用制限
私道は、私有地ですが、道路でもあるため、土地としての利用が制限されています。
建物の敷地にすることができない
私道となっている部分には、建物や塀などを設置することはできません。
また、建物を建築する際の敷地面積に含めることができません。例えば、容積率100%の地区に100㎡の土地がある場合、通常は床面積100㎡の建物を建てることができますが、土地のうち10㎡が私道の場合には、敷地面積は90㎡となり、90㎡の建物しか建てることはできません。
自由に道路を廃止できない
私道は、所有者自身は利用しない場合でも、その他の利用者がいる場合もあるため、自由に廃止することはできません。私道の廃止や変更には、その私道に接する全ての敷地および敷地上の建物の権利者の全員の同意が必要です。
所有者以外の人の利用の制限
私道は、道路ですが、私有地でもあるため、道路としての利用が制限されています。
通行の制限
第三者も歩いて通行することは認められますが、車両での通行には、所有者の承諾が必要です。
道路の入り口に柵が設置されているのを見たことがあるかもしれませんが、あの柵は、この制限に基づいて、車両の進入を防ぐ目的で設置されています。
掘削の制限
家を建てる場合、ガス管や水道菅などを道路から敷地へ引き込む必要があり、その際、道路を掘ることなります。公道の場合には、特に所有者の承諾は必要ではありませんが、私道の場合には、所有者の承諾を得る必要があります。
金銭面
費用負担
私道を所有している場合、その舗装等の維持管理のための費用負担が生じます。
また、公道に埋設されているガス管や水道管は、ガス会社や自治体の所有する管で、ガス会社や自治体が管理をしていますが、私道には私設管が引き込まれている場合があり、その維持管理は、所有者が行う必要があります。
財産価値
公道に面している敷地と私道に面している敷地では、一般に、公道に面している土地の方が価値が高いとされています。
私道の場合、道路を所有していれば、道路の維持管理の負担等が生じる可能性がありますし、道路を所有していなければ、通行や掘削の制限があるためです。
一般的に、私道部分の土地は単独では価値が無く、あくまで建物が建築できる通常の敷地部分とセットで取り扱われます。逆に、私道にしか面していないのに、その私道の持分がセットで購入できない土地は、利用が著しく制限される可能性があるため、価値がかなり低下します。
私道の種類
道路にはいくつか種類があり、建築基準法第42条で定義がされています。基本的に、全ての種別の道路が、私道でも存在する可能性があります。
- 1項1号(道路法による道路):敷地民有地の場合
- 1項2号(都市計画法等による道路):開発行為等で作られた道路で上地されていないもの
- 1項3号(既存道):建築基準法第3章が適用された際に既に存在していたもの
- 1項4号:2年以内に新設・拡幅等がされる予定で、特定行政庁が指定したもの
- 1項5号(位置指定道路):特定行政庁に道路位置の指定をうけたもの
- 2項道路:建築基準法第3章が適用された際に既に存在していた4m未満のもの
以下、少し詳しく内容を見てみましょう。
1項1号(道路法による道路)
道路法による道路は、国道・都道府県道・市区町村道のことで、原則としては所有は公です。ただし、所有が私のまま、公が道路としての使用承諾を取得して、道路法の道路としている場合もあります。
これは敷地民有地(又はシキミン)と呼ばれ、通常の管理は公が行っています。極めて公道に近い私道ですが、掘削等については所有者の許可が必要な場合もあるようです。
1項2号(都市計画法等による道路)
大規模の土地で宅地や戸建ての分譲を行う際、奥まった区画の出入り等の目的で敷地内に道路を設ける場合があります。これは都市計画法に定められた開発行為の中で設けられる道路のため「開発道路」と呼ばれていて、1項2号道路の代表的な例です。
1項3号(既存道)・2項道路
1項3号の道路と2項道路は、非常に近い関係にあり、建築基準法第3章が適用された際に現存していた道のうち、4m以上あるものが1項3号道路、4m未満のものが2項道路となりました。
道路は細長く続いているものなので、幅員に広いところと狭いところがある場合には、1本の道路でも、ある部分は1項3号、ある部分は2項道路となっています。
セットバックにより全域が拡幅された道路については自治体によって取り扱いが異なり、引き続き2項道路として取り扱われる場合と、4m確保されているのであれば1項3号道路として取り扱う場合の両方があります。
これは、自治体では2項道路の現況幅員について十分には把握できないことと、1項3号道路でも2項道路でも道路中心線から2mの確保は必要で、実務上区別する大きな意味が無いためと思われます。
1項5号(位置指定道路)
位置指定道路は、通常は私が所有している私道ですが、公が所有している公道の場合もあります。
公道の場合、1項1号道路となっていて、道路位置の指定の廃止などの手続きが取られていないため、1項1号と1項5号が併存しているということもあります。