敷地に対して建築できる建物の大きさは、地区ごとに容積率というもので定められています。ただし、敷地が接している道路の幅が狭いと、地区ごとの容積率よりも厳しく制限されることがあります。
これを「前面道路幅員による容積率の制限」と呼びます。では、内容を詳しく見てみましょう。
前面道路幅員による制限の有無
前面道路の幅員が12mあるかどうかで、制限の有無が異なります。
前面道路の幅員 | 制限の有無 |
12m未満 | 制限あり |
12m以上 | 制限なし |
2本以上の道路に面している場合には、太い方の道路の幅員を用いることができます。例えば6mと15mの道路に面している場合には、前面道路の幅員による制限はありません。
前面道路の幅員が12m未満の場合
前面道路の幅員が12m未満の場合には、地区ごとに定められている容積率(指定容積率)と下記の表の前面道路幅員による容積率限度の低い方が容積率の上限となります。
用途区分 | 用途地域 | 前面道路幅員による容積率限度 |
住居系の地域 | 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域 | 前面道路幅員 × 0.4 |
第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域 | 前面道路幅員 × 0.4(※)
(※ 0.6とする場合あり) |
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住居系以外の地域 | 近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域 | 前面道路幅員 × 0.6(※)
(※ 0.4又は0.8とする場合あり) |
例えば、指定容積率が200%の第一種低層住居専用地域で前面道路幅員が4mの土地の場合、前面道路幅員による容積率限度は 4m × 0.4 = 160% ですから、容積率の上限は160%となります。
同じ土地で、指定容積率が150%の場合には、指定容積率の方が前面道路幅員による容積率限度160%よりも小さいので、容積率の上限は150%です。
前面道路が二項道路の場合
前面道路が二項道路で4m未満の場合には、現況の幅員にかかわらず、前面道路の幅員を4mと見なして前面道路幅員による容積率限度を計算します。
近くに15m以上の幅の道路がある場合
前面道路幅員が12m未満で容積率上限が制限されそうな場合でも、近くに幅員15m以上の道路がある場合には、少し制限が緩和されることがあります。
これを「特定道路からの延長による容積率の割増し」と呼びます。なお、特定道路というのは、幅員15m以上の道路のことです。
適用条件
- 前面道路の幅員が6m以上
- 前面道路が直接70m以内で幅員15m以上の道路(特定道路)につながっている
割増し幅員の計算式
割増し幅員(m) = ( 12m - 前面道路幅員)×( 70m - 特定道路までの道路距離)÷ 70m
例えば、前面道路幅員が6mで、特定道路までの道路距離が35mの土地の場合、
( 12m – 6m ) × ( 70m – 35m ) ÷ 70m = 3m
割増しを受けた場合の容積率限度の計算
先ほどの土地が商業地域(指定容積率500%)だったとして、続けて計算してみましょう。
( 前面道路幅員6m + 割増し幅員3m ) × 0.6 = 5.4(540%)
容積率上限は、指定容積率の500%となります。
割増しが無い時は、6m × 0.6 = 360% となり、容積率上限は360%です。
この割増しについては不動産会社の人も正確に理解していないことがありますから、容積率の高い地区の不動産の売買を検討している方は、注意しておくと良いでしょう。