建築基準法に基づく制限の中に、「壁面線の制限」と「外壁後退」があります。
この二つは、どちらも壁の位置を制限しているように読めてるため、違いが非常に分かりにくいものです。ここでは、その違いと調べ方について整理します。
壁面線の制限
壁面線の制限は、ある街区において、建築物の位置を整えるために指定されるものです。街区内(敷地内)に、道路境界線から〇mという形で壁面ラインが設定され、その壁面ラインよりも道路寄りの範囲では、建築物の外壁・柱・2mを超える門または塀を建築することができません。道路から見た時に開放的に感じるように、建ち並ぶ建物の壁面の線が後退するように制限されていると考えると良いかもしれません。
ほとんどの場合、壁面線の制限は地区計画や高度利用地区の制限の中で設定されています。
外壁後退
外壁後退は、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域または田園住居地域内において設定されるものです。これは、絶対高さ制限(10m・12m)と同じですね。また、後退距離は1mまたは1.5mのいずれかに限定されています。
制限の内容は、建築物の外壁または外壁に代わる柱の面を後退させる、というものです。壁を後ろに下げるという点では壁面線の制限と似ていますが、壁面線の制限が道路境界線からの後退であるのに対して、外壁後退は、敷地境界線からの距離である点が異なっています。つまり、外壁後退では、道路側だけでなく隣地境界側の壁についても位置が制限されます。
例えば、横浜市では、以下のように定められています。
用途地域 | 建ぺい率 | 容積率 | 外壁の後退距離の限度 |
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 |
30% | 60% | 敷地境界から1メートル |
40% | 60% | 前面道路から1メートル | |
40% | 80% | 前面道路から1メートル | |
50% | 80% | 前面道路から1メートル(指定地域のみ) |
このように地域全体での規制が定められている場合以外では、風致地区・地区計画・建築協定区域内において指定されることが多いようです。
なお、横浜市では、戸袋・出窓・屋外階段・バルコニー等は、外壁又はこれに代わる柱の面と見なされます(雨戸、シャッター、シャッターボックス、面格子、花台は除く)。
壁面線の制限と外壁後退の違い
指定されるところ | 制限されるもの | 後退の起点 | 後退距離 | |
壁面線の制限 | 地区計画・高度利用地区などで制限されることが多い | 建築物の外壁・柱・2mを超える門または塀 | 道路境界線に対して | 決まり無し |
外壁後退 | 第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域
(風致地区・地区計画・建築協定区域内などで制限されることが多い) |
建築物の外壁又はこれに代わる柱の面 | 道路境界線・隣地境界線に対して | 1mまたは1.5m |
壁面線の制限と外壁後退の調べ方
都市計画課・建築指導課等で用途地域や建ぺい率・容積率または日影規制などの制限を調べる時に、合わせて確認してください。
地区計画・高度利用地区・風致地区・建築協定などで定められている場合は、各制限のパンフレット等に記載されています。