売買契約から引渡しまでの流れ(売主編)

売買契約から引渡しまでの流れ(売主編)

不動産の売却は、長い人生の中でも頻繁に経験するものではないため、分からないことも多いと思います。ここでは、不動産を売却する際にはどんな手続きがあるのか?、契約では具体的に何をするのか?、引き渡しまでにどんな準備すれば良いのか?をご説明します。

売買契約から売買が完了するまでの流れは、以下の通りです。

  1. 売買契約の締結
  2. 引渡しの準備
  3. 残代金決済・引渡し
  4. 引渡し後

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

売買契約の締結

買主と価格や引渡しの時期など売買条件が合意できたら、売主と買主で売買契約を締結します。

契約時に売買代金全額を受け取って不動産を引き渡す、という方法もありますが、契約時には売買代金の一部を受け取るだけで、売買代金の全額の受領・不動産の引渡しは後日、別に行うのが一般的です。

売買契約の概要

契約はいつするのか?

契約日は、いつでないといけないという決まりはありません。関係者である売主・買主・不動産会社の都合が良い日に設定されます。土日や祝日など休日の日中や、平日の夜に行うが一般的です。

どこで行うのか?

通常は、不動産会社のオフィスで行います。売主と買主の都合がどうしても合わない場合や、遠方にいる場合などには、売主・買主が集まらずに、不動産会社の担当者が契約書類を持って、売主・買主をそれぞれ回って契約する方法もあります。

所要時間は?

契約手続だけの場合には、だいたい1時間程度で終了します。買主への重要事項説明も合わせて行う場合には、合わせて2時間程度かかることが多いようです。

売主が契約時に準備するもの

権利証 登記済権利証または登記識別情報通知。所有者の証明として提示します。
印鑑証明書 発行後3ヶ月以内のもの。
実印 売買契約書等の押印に使います。
本人確認書類 運転免許証やパスポートなど写真付きの公的なもの。
印紙(又は印紙代) 契約書への貼付用。収入印紙の金額は売買代金の額によって変わります。
仲介手数料の半金 仲介会社へ支払います。残り半分は引渡し時に支払います。

売買契約当日の流れ

① 売主買主の紹介・挨拶

内覧の際に顔を合わせているケースもありますが、空室物件などの場合初対面であることもあります。不動産会社の担当者からそれぞれを紹介をします。

② 重要事項説明

重要事項説明は、宅地建物取引士が買主に対して行うものですが、内容の確認のため、重要事項説明書に売主も署名・捺印が求められます。必ずしも売主が同席する必要はありませんが、認識の齟齬やトラブル防止のため、売主も一緒に説明を聞くことが多いです。

なお、契約日より前に買主への重要事項説明が済んでいる場合、こちらは当日には行いません。

③ 売買契約書の読み合わせ

売買代金、解約期日、その他の条件など、売買契約書に記載された内容を、売主・買主で一緒に確認します。また、売買契約書の付属書類として、売主が買主に提示する物件状況等報告書・設備表についてもここで確認します。

物件状況等報告書は、売買物件について、売主が知っていることを買主に告知する書類です。設備表は、売買物件に付属している給湯機やキッチンなどの設備について、何があるのか、状態はどうか、を告知する書類です。

④ 署名・捺印、収入印紙の貼付

売買契約書の内容に問題がなければ、署名・捺印します。売主は、登記申請できることを示すために、実印で捺印するのが一般的です。

契約書には収入印紙が貼られます。こちらは売買の際に納める税金で、収入印紙が貼られているかどうかは契約書の有効性とは関係がありません。

また、契約書のほかに、重要事項説明書・物件状況等報告書・設備表・仲介会社への支払確認書など、多くの書類に署名・捺印をします。

⑤ 手付金の受領

買主から手付金を受け取ります。手付金は、通常は現金または預金小切手で支払われます。これは、契約が平日の夜や土日など、金融機関が営業していない日時に行われることが多いことや、支払い・受け取りをその場で確認するためです。

現金で受け取った場合には、その場で枚数を数えるのが原則です。仲介会社が枚数を数える機械を持っていることが多いので、手付金が数百万円になる場合には、利用すると良いでしょう。

手付金を受け取ったら、領収書を買主に渡します。通常、領収書は仲介会社が用意してくれていますので、その領収書に署名・捺印をして渡します。

なお、売主・買主が一堂に会さないで契約する場合などでは、銀行振り込みで手付金を受け取ることもあります。

⑥ 仲介手数料半金の支払い

仲介会社へ仲介手数料の半金を支払います。手付金を現金で受け取った場合は、そちらから支払うことが多いようです。また、仲介会社によっては、後日に銀行振込で支払える場合もあります。

⑦ 終了・解散

売買契約書や買主へ渡した書類の写しを受け取り、売買契約の手続きが完了します。

引渡しの準備

契約の取り決めに従って、売却物件を引き渡せるように、荷物の搬出等を行います。住んでいる場合には引っ越しをします。

また、住宅ローンが残っている場合には、金融機関に一括返済の申請をして、抵当権の抹消登記の準備を行います。

物件の準備

売買契約の取り決めに従って、物件の状態を整えます。

通常は空屋渡しですから、物件から荷物を搬出して、元から備え付けられている設備の他は何も無いようにします。エアコン・照明・カーテンについては、残すか、持って行くか(または撤去するか)について、売買契約の条件の一つになっていることが多いですので、取り決めの通りに対応します。

売買契約の際に提示した物件状況等報告書や設備表と異なる部分が出てきてしまった場合には、修復等が必要になることもあります。

また、更地渡しの場合には、建物の取り壊しを行います。

引渡書類の整理

引渡しの際に買主に渡す書類をまとめます。

土地や戸建ての引渡書類

  • 土地の測量図・境界確認書
  • 建築関係書類(建築確認書類・竣工図など)
  • 設備の取扱説明書・保証書など

マンションの引渡書類

  • 購入時のパンフレット・図面
  • 管理規約・使用細則
  • 管理組合関係の書類(総会の議案書・議事録など)
  • 設備の取扱説明書・保証書など

登記の準備

自分自身の氏名や住所の変更登記などは自分で行うことも可能です。ただし、登記手続きにはある程度の期間(1~2週間)が必要になるため、引渡日が近くなってから行うと、引渡し手続きができなくなる可能性があります。登記の手続きについては、仲介会社と司法書士の双方に相談をしながら進めるのが良いでしょう。

所有権移転の準備

司法書士と打ち合わせをして、所有権移転の申請ができる書類をそろえます。登記されている所有者の氏名や住所が現在と異なっている場合には、その修正を行うための書類(住民票・戸籍の附票など)が必要になります。

抵当権の抹消準備

住宅ローンが残っている場合には、金融機関に連絡をして、一括返済の準備を行います。

住宅ローンは完済してあるけれども抵当権の抹消を行っていない場合には、抹消の必要書類をそろえます。

残代金決済・引渡し

残代金決済・引渡し日には、買主から残代金(売買代金からすでに受け取っている手付金を差し引いた残り)を受け取り、代わりに所有権移転登記の手続き書類・鍵・引渡し書類を買主に渡します。

住宅ローンが残っている場合には、受け取った残代金で残債を返済し、抵当権の抹消登記を行います。

所有権の移転登記や抵当権の抹消登記等は、司法書士に依頼して当日中に申請手続きを行います。

残代金決済・引渡しの概要

いつ行うのか?

送金・着金確認等を行うため、金融機関が営業している平日の日中に行います。同日中に登記手続きも行う必要があるため、通常は朝の9~10時くらいから行われます。

どこで行うのか?

場所は、買主が住宅ローンを借りる場合には、融資銀行の支店で行います。住宅ローンを借りない場合や支店の無いネット銀行が融資銀行の場合には、仲介会社で行うのが一般的です。

参加者は?

売主、買主、仲介会社の担当者の他に、所有権移転登記を担当する司法書士が同席します。

所要時間は?

融資実行・送金・着金に要する時間によりますが、概ね30分から1時間程度です。かつては送金と着金確認に数時間かかるようなこともありましたが、システムが進化しており、非常に長く時間がかかることはほぼ無くなったようです。

売主が残代金決済・引渡し時に準備するもの

権利証 「登記済権利証」または「登記識別情報」
印鑑証明書 発行後3ヶ月以内のもの
実印
本人確認書類 運転免許証やパスポートなど公的なもの
売却物件の鍵 売買物件の鍵を全て引き渡す
買主に引き渡す書類一式 建築確認通知書・検査済証等建築関係の書類、マンションのパンフレット、管理組合関係の書類、設備の取扱い説明書等
登記費用 抵当権抹消登記等がある場合
仲介手数料の残額 不動産会社の口座に振り込むか現金で支払う

残代金決済・引渡日当日の流れ

① 登記必要書類の準備・確認

司法書士が用意してきた必要書類に売主が署名・押印します。その後、所有権移転登記ができる書類が全て揃っているを司法書士が確認します。

② 買主側の融資の実行

登記の書類が揃ったことが確認できたら、金融機関に伝えて、ローンを実行します。ローンが実行されると、融資金額が買主口座に振り込まれます。

③ 残代金等を受領する

買主から残代金と固定資産税・管理費等の清算金を合算した額が振込で支払われます。買主の振込手続きが終わったら、自分の口座に入金されていることを確認します。これを着金確認と言います。

実務的には、銀行等で決済手続き行っていて、振込ミスの可能性が非常に低い場合には、売主口座への振込票の控えの確認で済ますこともあります。

着金が確認されたら、手付金の時と同様に仲介会社が用意している領収書に署名・捺印し、買主に渡します。

④ 鍵・書類の引渡し

登記の手続き書類、鍵、その他の引渡し書類を買主に渡します。

仲介会社が用意した引渡完了証・引渡確認書など、引渡し手続きが完了した旨の書類に売主・買主の両者で署名・押印をします。

⑤ 登記費用の支払い

司法書士へ登記手続の費用を現金で支払います。前日以前であれば、通常、銀行振込で支払うことができます。

登記手続きを速やかに進めるために、登記の手続き書類と費用を受け取ったところで、司法書士が先に退席するのが一般的です。

⑥ 仲介手数料の支払い

仲介会社へ残っている仲介手数料を支払います。こちらも、仲介会社によっては、後で銀行振込で支払えます。

⑦ 終了・解散

領収書等、必要な書類を確認して、終了となります。

引き渡し後

 

登記手続き

引渡日のうちに、司法書士は所有権移転、抵当権抹消等の登記申請手続きを行います。登記が完了すると、完了の書類が届きます。 

瑕疵担保・設備保証

引き渡した物件に雨漏り等の瑕疵があった場合や、設備の故障があった場合、瑕疵担保責任や設備の保証期間内であれば、買主は売主にその補修を請求することができ、売主は修復等を行う義務があります。

瑕疵担保責任

瑕疵担保責任の内容は、売買契約によって異なります。建物が非常に古い場合には、免責とする場合もあります。

大手仲介会社が利用しているFRK書式の場合、建物の瑕疵担保責任は、以下の4つに限られています。

雨漏り
シロアリの害
建物構造上主要な木部の腐食
給排水管の故障

(このほか土地の瑕疵、心理的瑕疵もあります。)

FRK書式では、個人が売主の場合、瑕疵担保の責任期間は3か月となっており、この期間内に、売買契約前に買主が知らなかった瑕疵が発見され、その補修を請求された場合には、売主はその要請に対応する責任があります。

設備の保証

FRK書式の場合、設備表に「有」と記載されていて、不具合が無し、となっている主要な設備について、不足や不具合があった場合、瑕疵の場合と同様に、買主はその修復を請求することができます。設備の保証期間は一週間(7日間)とかなり短く設定されていますが、老朽化していたり、空き家の期間が長かったりすると、該当する場合もそれなりにあるようです。

よく見られるのは、シャワーヘッド・ホースからの漏水、換気扇が動かない、といったものです。

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