​よく分かる固定資産税・都市計画税

​よく分かる固定資産税・都市計画税

不動産を持っていると、毎年、固定資産税・都市計画税というものがかかります。固定資産税・都市計画税(少し長いのでこの後は、「固都税」と言うことにしますね。)は、不動産を所有している時の主要な費用ですから、詳しく解説したいと思います。

1.固定資産税・都市計画税の基本

① 納付時期

不動産を所有していると、毎年、4~6月ごろに不動産のある市区町村から納税通知書というものが届き、そこに書かれている金額を納付しなければいけません。納税通知書が送付される時期は、市区町村によって異なっていて、東京の場合には、23区であれば6月、小笠原村が4月、その他の市町村は5月です(平成30年度の場合)。

金額も大きいので、4回に分けて納付することになっています。納付期限は、納税通知書の送付月を第1期として、翌年の2月までに第4期までの計4回が設定されていて、各納付期限のおよそ1か月前から納付することができます。各期の納付期限は市町村ごとに異なりますから、送られてくる納税通知書に書かれている期限と納付額を確認してください。

また、4回に分けず、一括で納めることもできます。一括で納付しても、税額の割引や減額はありませんが、遅かれ早かれ納めないといけないものですし、手間を減らすことや納税漏れを防ぐこともできますので、資金に余裕があれば一括で納付することをお勧めします。

一括納付は、第1期の支払いの時にしか行うことができません。第1期にその期分だけを納税した場合、第2期以降の途中で残りを全部支払うことはできず、各期に分けて納税しなければいけません。

​② 税額

税額は、各市町村が評価した不動産の評価額(固定資産評価額)を基にした課税標準に税率をかけて計算されます。軽減等がなければ、通常は「固定資産税評価額 = 課税標準」です。

税率は原則、固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%、合わせて1.7%となっています。

固定資産税額 = 課税標準 × 1.4%

都市計画税額 = 課税標準 × 0.3%

固定資産税の税率は、市町村の条例で定めることとされていますが、通常よるべきとされる税率は1.4%で、一般的にも1.4%になっています。

都市計画税は上限が0.3%に決まっていて、市町村毎に下げることもできます。 東京都では、23区のみ0.3%で、他の市は0.3%未満に設定されており、武蔵野市・府中市・多摩市が0.2%で、他の市はその間に設定されています(平成29年度)。町村では、瑞穂町・日の出町が0.27%になっているほかには、設定がありません。

課税標準の基となる固定資産評価額は、各市町村長が総務大臣の定める「固定資産評価基準」に基づいて算定します。詳細は省略しますが、土地については公示地価の70%程度、建物は実際の建築費の概ね60%程度になるように設定されていることが多いです。

自分が所有している不動産の固定資産評価額がいくらなのかは、固都税の納税通知書に同封されている「固定資産税・都市計画税課税明細書」に記載されています。また、市町村役場等で取得できる「固定資産評価証明」にも記載されています。

​③ 共有の場合

共有の場合には、所有者のうち、筆頭者のところに納税通知書が届きます。筆頭者とは、登記簿で所有者として1番上に記載された人(登記簿上の筆頭者)のことです。各共有者のところに納税通知書が届くわけではありませんから、注意してください。

納税通知書は筆頭者にしか届きませんが、地方税法の規定により、固都税は各共有者の連帯債務になります。ですから、納税通知書が届かない他の共有者も納税義務を負っています。

この納税義務は、自分の持分に応じた負担、ということではなく、どの共有者がどう負担するかはともかく、とにかく固都税を全員できちんと納めければいけない、という義務です。

納税通知書の送付先を変更する時には、共有者全員の同意の上で「共有持分代表者指定届(指定・変更)」を不動産のある市町村へ提出します。

​④ 不動産を売買した場合は?

不動産を売ったり、買ったりした場合にはどうなるのか?ということが気になるかもしれません。 この場合も、納税をする義務があるのは、納税通知書が届く1月1日の所有者です。固都税は、所有期間に対して課される訳ではなく、あくまで1月1日の所有者に課される税金という位置付けのためです。

しかし、納税者の立場からすれば、年に1回課される税金ですから、その税金を1年分と見なして期間で負担を分ける方が適切と考えられます。そのため、売買で所有権移転する際には、固都税を日割りで精算するのが一般的です。

計算する際の1年の始まりの日(起算日)は、関東では1月1日、関西では4月1日とすることが多く、そこからの365日(うるう年の場合は366日)のうち、それぞれが何日所有しているかで負担金額を計算します。

例えば、関東で不動産を売買して7月1日に所有権移転を行う場合には、固都税額を365で割った内の、1月1日から6月30日までの181日分を売主側が、7月1日から12月31日までの184日分を買主側が負担するものと考えます。

固都税額が36,500円とすると、18,100円が売主の負担に、18,400円が買主の負担になります。固都税の納税義務者は売主ですから、市区町村には売主が全額の36,500円を納めます。買主は、自分の負担額18,400円を、自分の代わりに市町村に払う売主に払います。

この買主から売主への支払いは、固都税の清算金と呼ばれ、売買不動産の代金の支払日に売買代金と合わせて支払うのが一般的です。

この方法は、地方税法など法律上で規定されているものではありませんから、税金の扱い上は、売買代金の一部として取り扱われるため、売主が消費税の課税業者の場合には、この固都税の清算金にも消費税がかかるものとされています。

​2.固定資産税・都市計画税の軽減

固定資産税・都市計画税は、1回の金額もそれなりに高く、毎年支払うものですから、総額での負担はかなり大きくなります。

しかし、住宅の場合には、かなり手厚い軽減が用意されています。 通常は、自動的に受けられますが、期限のある軽減もありますし、対応を間違えると終了してしまうこともありますから、税金が上がってから驚くことがないように、あらかじめ概要を知っておくのがおすすめです。

​①【土地の軽減】住宅用地の特例措置

住宅の敷地になっている土地については、課税標準の特例措置を受けることができます。(税率の軽減ではなく、課税標準額が軽減される、ということですが、結果は同じで税額が軽減されます。分かりやすいように、ここでは税額の軽減として考えていきます。)

住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分は、「小規模住宅用地」というものとして扱われ、なんと固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1になります。

固定資産税率が1.4%、都市計画税率が0.3%とすると、更地(建物などが無い土地)なら土地の評価額の1.7%の税金がかかるところ、小規模住宅用地だと、約0.33%となり、およそ5分の1に軽減されます。

200㎡まで、つまり60坪までですから、よっぽどの豪邸でなければ、都市圏ではだいたい納まります。また、住宅1戸につき土地200㎡、ですから、アパートやマンションなどの共同住宅の場合には、例えば10戸あれば、200㎡ × 10戸 = 2,000㎡までが小規模住宅用地として扱われます。

そして小規模住宅用地の範囲に納まらなかった住宅用地は、「一般住宅用地」という扱いになり、固定資産税が3分の1、都市計画税が3分の2になります。

一応、住宅用地と見なされるのは住宅の総床面積の10倍まで、という制限がありますが、都市圏では、やっぱりこの基準をオーバーすることはなかなかないでしょう。

なお、こちらは、あくまで住宅用地であれば対象になり、建っているのがマイホーム(自己居住用)でなくてもいいですし、実際に人が住んでいるかどうかも関係ありません。

つまり、アパートなど賃貸用の住宅でも空き家でも軽減の対象になる、ということで、あまり自覚は無いかもしれませんが、ほとんどの人がこの軽減を受けています。 逆に、建物を解体すると急に税金が上がり、土地の固都税は約5倍になってしまうわけです。

ですから、このことを知らないで空き家を解体すると、税額が一気にあがって、とてもびっくりすることになります。

ボロボロの古い空き家がなかなか解体されない理由の一つは、建物を壊してしまうと、この住宅用地の軽減を受けることができなくなって、税金が上がってしまうためです。

「空き家の増加が問題だ!」と昨今よく言われますが、制度的に空き家が増える仕組みになっています。土地のニーズが高い都市圏はともかく、地方圏では、建物を壊した後の活用も難しいので、空き家を壊さない、というのは、現状では合理的な考え方でもあります。

また、家を建て替える時も、課税の基準となる1月1日に、建物がある状態にしておかないと、同じように固都税が上がってしまうので、注意してください。

​②【建物の軽減】新築住宅の減額

住宅を新築する場合、床面積が決められた基準を満たしていれば、最初の3年間、建物の固定資産税額が2分の1に軽減されます。(住宅1戸あたり120㎡まで)

また、マンションなど3階建て以上の耐火建築物・準耐火建築物では、なんと最初の5年間、2分の1に軽減されるのです。

<床面積の基準>

マンション(区分所有):住戸の面積に廊下などの共用部分の面積を按分して割り振った床面積が50㎡以上、280㎡以下。貸家の場合には40㎡以上、280㎡以下。

一戸建て住宅:床面積が50㎡以上、280㎡以下

アパート(賃貸用):住戸の面積に廊下などの共用部分の面積を按分して割り振った床面積が40㎡以上、280㎡以下

事務所や店舗との併用住宅:住宅部分の床面積が50㎡以上、280㎡以下。ただし、住宅部分が全体の2分の1以上必要。

最初の3年または5年の軽減が終わると、急に税額が増えますから、予め心の準備が必要ですね。

​3.評価替え

固定資産税・都市計画税の対象になる土地や家屋の評価額(固定資産評価額)は、3年に1度、評価替えが行われます。

評価替えのある年を基準年度、前年度の評価を引き継ぐ年を据置年度と言います。平成30年度は、前回の基準年度から3年目にあたるので、新しい基準年度に該当し、固定資産評価額の改定が行われます。平成31年度・平成32年度は据置年度となり、平成30年度の評価額が原則そのまま使われます。

​① 評価替えの年の固都税額の確認方法

4月1日以降、市区町村(東京都(23区)は都税事務所)で固定資産評価証明を取得すると、評価替え後の評価額が記載された証明書をもらえます。しかし、評価替え後の固定資産税・都市計画税が固定資産公課証明に記載されるのは、納税通知書の送付の月(東京都(23区)の場合は6月1日)からです。

※    固定資産評価証明書は、固定資産評価額が記載されている証明書で、固定資産公課証明書は、固定資産税・都市計画税の税額が記載されている証明書です。固定資産公課証明書は、市町村毎に名称が違うことが多く、東京23区の場合には、「固定資産関係証明書」と言われます。

その年度の固定資産税額・都市計画税額は、公課証明書のほか、納税通知書に同封される固定資産税・都市計画税課税明細書でも確認が可能ですが、例えば東京都(23区)では、固都税の納税通知書は6月1日に発送されることになっているため、正確な税額が分かるのは6月1日以降となります。

つまり、公課証明書および固定資産税・都市計画税課税明細書では、評価替えが行われた4月1日から税額が確定する6月1日までの間、その税額を知ることができないことになります。しかし、売買でその期間に所有権移転を行う場合など、新しい税額が分からないと困ることがあります。

そのように4月1日から5月末までの間にその年度の固都税を知りたい場合には、名寄帳(なよせちょう)の写しの交付(閲覧)で対応します。名寄帳には、4月1日以降、その年度の固都税額が記載されています。この期間に記載されている税額は予定額ですが、ほとんどの場合、そのまま確定額となります。

なお、公課証明書は土地ならば地番1つ毎、建物なら家屋番号1つ毎といった固定資産ごとに発行されますが、名寄帳は所有者単位で発行されるもので、その市町村内に複数の不動産を所有している人の場合には、その全てが記載されます。所有財産がかなりはっきりと分かってしまうこともありますから、名寄帳の取得を誰かに委任する場合には、その点に注意してください。

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