不動産を売るとき、売却を依頼する不動産会社が決まったら、早速販売活動がスタートします。販売活動と聞いた時、広告をして、お客さんが見学に来たりすること?というようなイメージがなんとなく浮かぶものの、実際にはどんなことをするのか、初めての場合は具体的に良く分からないこともあると思います。ここではその具体的な内容と気を付けたい点などについて解説します。
販売活動の具体的内容
(1)広告の方法と媒体
売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結したら、不動産会社は一早く買主を探すべく、すぐに広告を開始します。広告の方法としては次のようなものがあります。
・見込み客、来店客に紹介
販売を依頼されたら、まずは同じような条件で探している自社の見込み客に一早く連絡を取って、紹介します。また、物件を探しに来店したお客様にも紹介します。
・自社HPへの掲載、店頭に掲示
会員登録をしている購入希望客にメールで知らせたり、定期的にHPを見てくれる人にも知らせます。店頭でも壁面に掲示したり、ラックなどに設置するなどして、来店客や通行者の目にも留まるようにします。
・不動産ポータルサイトへの掲載
「suumo」、「HOME’S」、「athome 」などの、一般の人が良く見る物件情報サイトに掲載します。世の中の、物件を探している人全てに向けて、物件情報を知らせることができます。
・不動産指定流通機構(レインズ)へ登録する*1
レインズに登録することで、自社の顧客だけでなく他社の購入希望客にも物件情報を提供することができます。詳しいしくみについては下記の「不動産指定流通機構(レインズ)について」を参照してください。
・新聞折り込み広告の実施
周辺や近隣エリアにおいて、新聞折込広告を行います。インターネット上の情報は、基本的には物件を探している人に対してしか訴求効果がありませんが、このような配布型の広告の場合、潜在的な購入希望顧客に対しても訴求することができます。
普段は特に物件情報をネットで検索したりしないような人でも、広告がきっかけとなって購入意欲が引き出されることもあります。近年、新聞を購読している人は減ってきているものの、こうした折込広告の可能性もまだ残っています。
・近隣へのチラシ投函
物件の周辺エリアの住戸に、チラシをポスティングします。新聞折込み広告に比べると、配布出来る範囲は狭くなりますが、訴求効果は同様です。各戸のポストに直接投函するため、見てもらえる可能性が高いという効果もあります。
・オープンルーム、オープンハウスの実施
主に週末の土日(1日だけのこともあります)に、物件に担当者が常駐して、予約なしで自由に見学してもらえるようにするものです。マンションの入り口や建物のすぐ前に、オープンルーム(ハウス)開催中の看板を設置したり、事前に周辺エリアに新聞折り込み広告を実施して告知します。
たまたま近くを通った人がフラッと立ち寄ったり、広告を見て興味を持って見に来た人が気に入って購入に至る、というケースもあります。
"こんなところの物件が売りに出ているんだ。→どんな物件かなぁ?近くだし散歩がてら、試しに見に行ってみよう。→なんだかすごく良くて気に入った。→買いたい!"
というような具合です。
*1不動産指定流通機構(レインズ)について
不動産業界には、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している、「レインズ(REINS=Real Estate Information Network Systemの略)」と言われるネットワークシステムがあり、不動産会社はこのレインズを利用して、全国の物件情報を検索することができます。
不動産会社は売主から売却依頼を受けたら、一部の場合を除き、このレインズに物件を登録することが厳しく義務付けられていて、正当な理由(商談中など)なく、他社への紹介を拒むことはできません。
レインズに登録することにより、不動産会社間での物件情報の交換が行なわれ、自社だけでなく他社のお客様にも物件情報を提供することで、より早く買主を見つけることができます。また、購入希望のお客様の対応をする不動産会社にとっては、レインズを検索することで、自社で売却依頼を受けている物件以外の物件も紹介することが出来ます。
(2)内覧について
広告を実施して興味を持った人がいたら、実際に物件を見学してもらいます。現地の建物やお部屋を見ていただいた上で検討をしてもらうためです。見学してもらうことを、内覧、内見、あるいは案内とも呼びます。
販売活動を始めると、早ければ最初の週末から内覧の希望が入ります。内覧が入るのは主に土日で、大体月に2~5件ほど入ります。見学される方は一般的には会社員の方が多いので、内覧日も土日になる事が多いです。
販売活動中はこうした内覧の対応が必要となるため、より多くの方に見ていただくためにも、スケジュールを内覧希望に合わせる必要も出てきます。
内覧の希望がある場合には、前もって連絡が入る場合もあれば、当日に連絡が入る場合もあります。不動産会社の担当者から、都合の確認の連絡が入るので、日程調整をします。一日一組の時もあれば、日によっては2~3組の内覧希望が入る事もあります。
内覧の際は売主も立ち合いますが、見学者の誘導は不動産会社の担当者がします。売主は笑顔で様子を見守り、何か質問があったら回答する、という感じで、あまり自分から積極的なアピールはしない方が好印象です。
また、居住中で売出す場合は、内覧に備えて片付けや掃除をいつも以上に念入りにして、室内を整える必要があります。戸建ての場合は、庭などの外回りも綺麗にしておくと良いでしょう。
居住中だからと言って普段からのそのままの状態だと、逆に悪い印象を与えてしまいかねません。出来ればプロのハウスクリーニングを利用して、ある程度綺麗に整えることをお勧めします。
内覧についてのより詳しい内容は、
についてもご覧ください。
販売活動のチェックポイント
販売活動をスタートしたら、あとは不動産会社に任せておけば大丈夫、と思っているだけではスムーズな売却に至らない場合もあります。
適切な販売活動が行われているか、売主としてチェックすべきポイントを挙げてみました。
(1)囲い込みをしていないか?
他の不動産会社から問い合わせがあった際、まだ契約予定でもないのに契約予定と嘘をついて、他社の顧客に物件を紹介しないことがあります。これを囲い込みといいます。販売活動を続けていても、他の不動産会社の紹介による見学がない場合には、囲い込みをしている可能性もあります。
なぜこうした囲い込みをするのかというと、不動産会社としては、買主も自社で見つけることが出来れば、売主からだけでなく買主からも仲介手数料をもらうことができるからです。一つの案件で倍の売り上げを得ることができるのであれば、買主も自分のところで探した方が良いからです。
そのため、レインズ経由の他社への紹介をストップさせておいて、その間に自社の既存顧客へ紹介したり、インターネットからの反響も、自社に集まるようにするのです。
囲い込みをすると、売却を依頼している不動産会社の顧客にしか物件を紹介してもらえないので、検討してもらえる機会も、内覧の機会も減ってしまう事になり、売主にとっては売却の機会が損なわれることになってしまいます。これは売主の利益に反する行為です。
ただし、あまり長い期間囲い込みを行っていると、内覧の数が増えなかったり、他社の紹介による内覧がないことから、売主からも疑われることになるので、通常は、はじめの1~2週間程度で囲い込みは終わります。
もしも囲い込みが疑われたら、販売を依頼している不動産会社に、さりげなく、「他の不動産会社のお客様にも紹介していただいていますよね?」と確認してみましょう。その一言だけで、担当者は囲い込みをやめて他社への紹介を始めるでしょう。
(2)広告の内容や頻度は適切か?
冒頭の販売活動の具体的内容で、広告の種類について説明しましたが、これらの広告を全て実施するとは限りません。売主によっては、近隣に知られやすくなる新聞折込み広告や、チラシの投函はしないで欲しい、という要望の方もいます。その場合には、レインズやインターネットへの掲載、店頭での掲示などのみで広告することになりますが、それらもただなんとなく掲載していれば良いというわけではありません。
インターネットのみで広告している場合でもそうでない場合も、掲載されている物件の情報や写真などは、良い印象を与える内容になっているかをチェックしてみましょう。掲載する際は、最近は写真を載せるだけなく、室内の動画を掲載している場合もあります。
動画もあると、検討している人にとってはより興味を持ってもらいやすくなります。売却を依頼している不動産会社で実施できる広告はどんなものがあるのかも確認し、こうした動画のコンテンツなど、活用できる方法については積極的に活用してみましょう。
写真や動画は、査定の際などの訪問時に撮影することが多いですが、あいにく天気が悪かった場合、暗い印象の写真になってしまっている事もあります。そうした場合には、写真を撮りなおすことも、担当者と相談してみましょう。
新聞折り込み広告やチラシについても、書かれている内容、配布のエリアや頻度はどうなのかを、売主も確認しておくと良いでしょう。もう少し実施を増やしたい希望がある場合には、担当者と相談してみましょう。
また、どれくらいの反響があったかや、どんな販売活動を行ったかについては、不動産会社が売主に対して提出する、営業活動報告書で確認することができます。これは専属専任媒介契約と専任媒介契約の場合は、1週間あるいは2週間に一度の割合で、売主へ提出することが宅建業法で義務付けられています。不動産会社によっては、一般媒介契約でも提出してくれるところもあります。
この報告書の内容も合わせて確認することで、販売活動の状況を把握しましょう。
販売活動のチェックポイントについては、
についてもご覧ください。
販売価格、販売活動の見直し
内覧に来る回数が少なかったり、内覧はあっても購入申込みにまでなかなか進展しない場合には、価格や活動の見直しが必要です。売れ残っているとの印象を与えてしまうと、なんとなくあまり良くなさそうな物件とのイメージが生まれて、さらに売れにくくなることもあります。
そこで、見直しのポイントをいくつか挙げてみました。これを参考に不動産会社と相談して、早期の売却を目指しましょう。
(1)設定金額の見直し
周辺の相場に比べて高い価格設定になっていないか?
価格設定が高いと、はじめから検討対象から外れてしまったり、価格交渉をしてもあまり下がらないのではないか、という印象を持たれてしまうこともあります。はじめは高値での売却を狙って、相場より高めの価格で売出すことはありますが、思ったような反響がない場合には、時期を見て価格の変更が必要です。
(2)物件の状態の見直し
物件が汚れていて印象が悪くないか?
修繕した方がよいところがないか?
物が多すぎて雑多な印象を与えていないか?
物件を客観的に商品として見てみて、売主の努力で改善できる点については、もう一度改善してみましょう。
(3)販売活動の方法・媒体の見直し
内覧希望者の希望に沿った時間で内覧ができているか?
不動産会社の販売活動のやり方、紹介している内容は適切か?
それまではインターネット上の広告しか実施していなかった場合でも、新聞折り込み広告や周辺へのチラシの配布、オープンルーム(ハウス)実施についても検討してみると良いでしょう。