レインズ(REINS)とは何か?

レインズ(REINS)とは何か?

不動産の売買経験のある方や、インターネットなどで不動産売買について調べたことのある方は、「レインズ」という単語を耳にしたり、見たことがあるかもしれません。

日本の不動産売買では、このレインズが非常に重要な役割を果たしています。ここでは、レインズがどんなもので、不動産を売る時にどのような役割を果たしているのか?不動産を高く売るためには、レインズをどのように使えば良いのかを説明します。

レインズとは?

まずはざっくり、レインズって何?

レインズとは、アルファベットでREINSと書きますが、これは、Real Estate Information Network Systemの略称で、不動産取引のためのネットワーク・システムのことです。

東日本レインズ・中部レインズ・近畿レインズ・西日本レインズの4つのシステムがあり、それぞれ国土交通大臣が指定した(公財)東日本不動産流通機構、(公社)中部圏不動産流通機構、(公社)近畿圏不動産流通機構、(公社)西日本不動産流通機構が運営をしています。

不動産会社が自社が販売を担当している物件の情報をレインズに登録すると、その他の不動産会社はレインズでその情報を見ることができます。不動産会社は、レインズを通じて、その時に販売されている日本全国の物件の情報を知ることができるという大変便利なシステムです。

ただし、残念ながら、レインズにアクセスできるのは指定流通機構の会員である不動産会社のみで、一般の人はアクセスすることはできません。

レインズへの登録義務

レインズが非常に便利なのは、販売中のほとんどの物件情報を知ることができるからです。なぜレインズにそんなにたくさんの販売物件の情報が登録されているのかというと、実は不動産会社には販売物件の情報をレインズに登録する義務があるからです。

不動産仲介会社に不動産の売却を依頼する時、売主は不動産仲介会社と媒介契約というものを結びます。媒介契約には、「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類がありますが、このうち「専属専任媒介」と「専任媒介」では、不動産会社は物件情報をレインズに登録することが義務付けられています。

媒介契約の種類 レインズの登録義務の有無および登録期限
専属専任媒介 有り。媒介契約締結日の翌日から 5日以内。
専任媒介 有り。媒介契約締結日の翌日から 7日以内。
一般媒介 無し。任意のため、登録も可能。

正確な統計は存在しませんが、戸建てやマンションなどの一般的な住宅では、売却物件の8割程度は専属専任媒介または専任媒介で販売されていると考えられます。また、登録義務のない一般媒介の物件でもレインズに登録されているケースは多いので、かなりの物件が網羅されています。

レインズの使われ方

では、不動産売買の現場では、実際にどのようにレインズが使われているのかを、簡単に説明します。主に、以下の3つに使われています

  • 購入希望顧客への物件紹介
  • 市場状況把握
  • 相場把握

購入希望顧客への物件紹介

不動産を買いたいというお客さんがいるときに、自社で販売を担当している物件しか紹介できないとしたら、不動産会社はなかなか担当している物件が売れないでしょうし、お客さんは非常にたくさんの不動産会社を回らないといけないですよね。

レインズを使えば、以下のようにお客さんのニーズにあった物件を紹介できますから、そのようなことはありません。

  1. まず、売主から不動産の売却の依頼を受けた不動産会社(売主側仲介)がレインズに売却物件を登録します。
  2. 不動産を買いたいという顧客を担当している不動産会社(買主側仲介)がレインズで物件を検索します。
  3. 地域や金額の条件で検索した結果、①の物件が見つかります。
  4. 買主側仲介が売主側仲介に物件確認を行います。物件確認とは、物件を自分の顧客に紹介してよいかを担当会社へ確認することです。もし既に契約予定者が決まってしまった場合などは紹介ができません。
  5. 買主側仲介が顧客に物件を紹介します。
  6. 物件を紹介された顧客が物件を気に入れば、購入検討・内見へと続いていきます。

市場状況の把握

不動産を売る場合でも、買う場合でも、損をせずに売買をしたいと考えたら、相場や市場の把握は非常に重要です。

レインズには多くの売却物件が登録されています。調べたい地域や金額帯を指定して検索すれば、今そのエリアでは売却物件は多いのか少ないのか、どんな物件がいくらで売られているのか、という中古不動産マーケットの情報が大部分入手可能ですし、レインズ以外では実際の売買のデータを入手することはほとんどできません。

相場の把握(成約事例)

不動産は一つひとつが異なっていて同じものはありませんし、ほんのちょっとした条件の違いでかなり金額が異なることもあります。そのため、成約価格と成約物件の詳細な条件のデータがなければ、正確な価格の推定はできません。

売却物件ほど登録の義務が厳しくないため、情報の件数は限られますが、レインズには、過去にどの物件がいくらで売買されたのかという成約取引の履歴情報も登録されています。不動産マーケットには、信頼できる成約価格の情報は他にはほぼ存在しないため、ほとんどすべての会社がレインズの情報をもとに価格を推定しています。

不動産会社は、この過去の成約事例を参考にして価格査定を行いますし、購入希望のお客様に対しても、同じデータをもとに相場の説明を行います。

不動産を売る時のレインズの役割

もしレインズがなかったら?

もしレインズがなかったら、不動産会社間で売却物件の情報を共有することができません。そうすると、不動産会社は、自社が売却依頼を受けた物件を、自らの販売活動のみで買主を見つけなければならないことになります。

不動産の良い買い手はどこにいるのか事前には分かりません。そのため、多くの購入希望者に情報を届ける必要があります。スーモ(SUUMO)やアットホームなど複数ある消費者向けの不動産情報サイト(いわゆる不動産ポータルサイト)への物件広告の掲載や、新聞の折り込みチラシなどを大量に行なっても、その買い手に情報が伝わるかどうかは分かりません。しかも、実際には広告費は限られていて、全ての広告を行うことはできません。

物件情報を届けられる範囲は限られ、良い買い手になるはずの人の目に触れない可能性も増します。結果として、売主は良い買い手に出会いにくくなり、販売が長期化したり、本来の価値よりも安い金額で売却したりすることになります。

買い手にとっても同様です。もし、不動産会社間で物件情報が共有されなかったら、購入希望者は市場にある物件を把握するために、インターネットやチラシなど全ての広告を自分でチェックしなければなりません。また、気になる物件があった時は、その物件を担当しているそれぞれの不動産会社に問い合わせをしなければなりませんし、その度ごとに自分の希望条件の詳細や資金計画などを説明しなければならないかもしれません。

レインズは、そのままだとバラバラで伝達しにくい不動産の売却情報を一か所にまとめ、売主・買主の双方にとって効率的な形で伝達させる仕組みなのです。

レインズを活用すれば、より高い価格で、より早く売却できる

このように、レインズに登録して他の不動産会社に物件情報を共有すると、その不動産会社が対応している購入希望顧客に物件を紹介してもらうことができます。不動産会社の数は非常に多いので、他社の顧客にも情報を伝達できれば、販売活動の及ぶ範囲は大幅に広がります。

しかも、不動産会社の担当者が、良い点・悪い点なども説明してくれる訳ですから、購入検討者が単にインターネットの情報を見るだけの場合に比べると、より購入につながる可能性も高くなります。言ってみれば、全国の不動産会社を販売代理店にできるようなものです。

結果として、不動産をより高い価格で、より早期に売却できる可能性を高めることができます。

これは、買主が高い金額を出して損をしているという意味ではなく、マッチングがより適切に行われ、買い手自身にとってより価値の高い物件が見つかるため、結果として金額も上がる、ということです。

レインズを活用したくない不動産会社の事情

レインズを活用しないメリット

レインズは売主・買主にとって非常に有効なシステムですが、常に十分活用されているわけではありません。それは、特定の不動産会社にとっては、レインズを活用しないことがプラスになるケースがあるからです。

レインズは、不動産の売却物件情報を他の不動産会社へ共有する仕組みです。売却を担当している不動産会社の立場から言うと、独占している情報を無料で他の不動産会社に開放することになります。

独占禁止法や公正取引委員会が規制している通り、ビジネスにおいて独占は非常に有利な状態です。情報を独占することで、不動産会社には以下のようなプラスがあります。

  1. 購入顧客を集めやすい
  2. 両手取引にしやすい

購入顧客を集めやすい

不動産の売買取引では、仲介会社は、売主からも買主からも報酬をもらいます。近いうちに不動産を購入したいという顧客の情報それ自体が不動産会社にとっては非常に価値があります。

一般的に、売却の依頼を受けた不動産会社は、その物件のインターネットやチラシなどの消費者向けの広告は、自社しかできないようにしています。他の会社が広告をして、見込顧客にそちらに行かれてしまうともったいないからです。

しかし、消費者向け広告を自社だけに制限しても、レインズ経由で物件紹介を紹介されてしまえば、その購入検討者は自社には来てくれません。

他の不動産会社が物件紹介をできないようにすれば、他社経由で買い手がその物件にたどり着くことはありませんから、いつかは唯一広告をしている自社にたどり着くはずです。このように、レインズを使わないメリットがあります。

レインズを使わないと、不動産の販売が難航する可能性が高まりますが、あくまで不動産は売主の所有物です。保管費もかかりませんし、価格が下がったり、売れ残ったりするのもあくまで売主のリスクですから、販売の難航は不動産会社にとっては、それほど重要な問題ではないのです。

両手取引にしやすい

不動産の仲介取引では、売主も買主も、自分が依頼した不動産会社に手数料を払います。この不動産会社が売主と買主で同じ会社の場合、その不動産会社は売主からも買主からも手数料をもらうことができ、両方から手数料をもらうことにちなんで「両手取引」と呼びます。 (逆に、売主と買主が異なる会社に依頼している場合を「片手取引」と呼びます。)

前述の通り、売却を担当している不動産会社は、情報の独占を維持できれば、他に買い手を見つけられる不動産会社はなくなりますから、必ず両手取引にすることができます。ここをスタートに考えると、レインズに登録して正直に情報を共有するなんて、わざわざ買主側の手数料をどこかの不動産会社にあげるような馬鹿げた行為、というふうに映ってしまうのです。

そのため、情報を他社に出さないような行為が広く取られて来ました。これを「囲い込み」と呼んでいます。

囲い込みの効果は絶大です。

例えば3,000万円の不動産を売買したとき、片手の仲介手数料は96万円(消費税抜)です。両手にできれば倍の192万円(消費税抜)ですね。販売に使った人件費や広告費その他もろもろを合わせて、経費が80万円だったとしましょう。片手の場合、96万円-80万円=16万円が利益になりますね。

両手の場合は、どうでしょう? 両手でも、買主の対応をする分の人件費が追加になるくらいで、経費は大きくは異なりません。ここでは追加費用を+20万円としましょう。すると、両手の場合の利益は、192万円-100万円=92万円となります。

これは片手取引の約6件分です。手数料が倍、というだけでは伝えきれないおいしさがここにあることがお分かりになると思います。

不動産会社の手法

レインズを無力化するために、不動産会社は以下のような行動をとります。

  1. 非公開物件(水面下物件)にする
  2. 囲い込み
  3. 非協力にする

非公開物件(水面下物件)にする

販売業務を1社のみで独占できる専属専任媒介・専任媒介は、売却成約時に必ず報酬がもらえるため、不動産会社にとっては、一般媒介よりもはるかに価値が高い契約です。そのため、不動産会社は、通常は一般媒介ではなく専属専任媒介・専任媒介を顧客に提案します。

しかし、不動産会社が一般媒介契約を提案することがあります。それは、レインズへの登録を避けようとする場合です。

専属専任媒介・専任媒介の場合、レインズへの登録義務がありますが、一般媒介であれば、レインズへの登録は任意です。そのため、情報公開を制限しようとする不動産会社の担当は、一般媒介を提案するのです。

どのように売主を一般媒介に誘導するのかと言うと、以下のような「情報拡散はマイナス」という話をします。

  • 情報を限定して希少性を出すことで高く売れる
  • 情報が出すぎると出回り物件になって価値が下がる

それらしく聞こえるかもしれませんが、実際には、マンション・戸建て・土地のような一般住宅で情報拡散がマイナスになることはありません。

このような話をされた場合には、レインズ登録を避ける目的を疑うべきでしょう。

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