不動産について確認していると、土地の一部が都市計画道路の区域になっている、あるいは周辺に都市計画道路がある、という場合があります。ここでは、この都市計画道路についてご説明します。
都市計画道路の概要
概要
都市計画道路とは、都市計画法に基づいて計画された道路のことです。既にある道路の幅を広げる拡幅計画と、道路以外のところに新しく道路を通す計画の両方があります。
都市計画道路の区域(計画区域)の土地は、将来道路になることが計画されているので、建物の建築制限があります。また、都市計画道路が事業化された際には、道路用地として買収されることになります。
計画区域に含まれていなくても、周辺に都市計画道路がある場合には、将来、交通量の増加で騒音や振動、排気ガス等により住環境が大きく変化する可能性があります。
このように大きな影響があるため、重要事項説明書の中で説明されます。
整備の流れと現状
都市計画道路は、実際に整備されるまでに大きく4つの段階に分かれます。
- 計画決定 都市計画によって整備計画が定められる
- 事業決定(認可) 実際に事業に着手することを決定する
- 事業実施 整備の工事等を行う
- 完了・供用開始 工事が完了して、利用が開始される
計画決定から事業決定までにかなりの年数を要するケースも多く、昔に計画された都市計画道路で、まだ計画決定段階のままというものも多くあります。
計画時には整備の必要性があると思われた道路でも、その後時代が進むにつれて整備の必要性が低下した道路もありますし、必要性は高くても予算や用地取得の問題等で整備することが難しい道路もあるようです。
東京都の場合、昭和21年から昭和41年ごろまでに計画決定され、そのまま事業化されていない都市計画道路が多くあります。
東京都では、このような状況を踏まえて、現在ある都市計画道路の見直しを行い、重要性・緊急性がある道路を「優先整備路線」として、今後10年間の間で(平成28年度から平成37年度)優先的に整備していく方針を定めています。(東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針 中間のまとめ より)
区域内の建築制限
実際にいつ整備されるのかは分からないものの、将来整備される予定のため、都市計画道路の計画区域では、建物等の建築は制限され、許可を得ないと建物を建築することはできません。
<都市計画法第54条による許可基準>
① 2階建て以下(地階なし)
② 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造等
③ 容易に移転又は除却できる建築物
そのほかに、自治体で別の基準を定めている場合もあり、世田谷区では、道路区域を分離できるような設計上の配慮をすることなどを条件に、3階建てまでが許可されます。
都市計画道路を整備する上で支障になるものは建ててはいけないという制限なので、移転や除去が比較的容易な木造や鉄骨造の建物などは建築が許可されます。
鉄筋コンクリート造の建物は建てられないため、敷地内に都市計画道路の計画区域があるマンションでは、計画区域部分を通路や駐輪場にして、計画区域の外側に建物を建ててていることが多いです。
また、対象不動産の敷地上に都市計画道路の区域が含まれている場合には、こうした建築制限があることが重要事項説明書で説明されます。
整備に伴う影響
都市計画道路が実際に事業決定がされ、整備が行われると以下のような影響があります。
- 道路区域の土地の買収
- 周辺の住環境の変化
都市計画道路を知らずに物件を購入してしまうと、もし道路が整備される計画があることを知っていたら購入しなかったのに、ということも起こりかねません。
そのようなことが無いようにしっかり重要事項説明書で確認しておきましょう。
事業実施による土地買収
都市計画道路が事業化されると、計画区域の土地は国や自治体に収用されます。また、土地上に建造物がある場合は、取り壊す必要があります。なお、土地の収用にあたっては、代金や補償料を受け取ることができます
マンションなどで敷地が大きく、その一部が計画区域に該当している場合には、その部分だけが買収対象となります。
鉄筋コンクリートの建物は道路区域外に建っていますので、建物の除去は通常必要ありませんが、マンションの敷地は小さくなるため、将来建て替えをする際に現在建っている建物と同じ大きさの建物は建てられない可能性があることに注意が必要です。
周辺の住環境の変化
道路が整備されると、工事中は騒音や振動が発生しますし、工事車両などの通行も増えます。また、整備完了後には、交通量が増え、騒音や排気ガスが以前よりも増加する等の環境の変化が考えられます。
整備後の道路沿いに店舗が立ち並ぶなど、道路の規模によっては、住環境が一変することも考えられます。